かけがえのないミスタードーナツ
なんとなく覚えている曖昧な一番古い記憶のはなし
ボクが小さい頃、たぶん5歳くらいのときに母方の祖父母の家に何日か泊まっていたことがあった。
トイレはくみ取り式でトイレットペーパーではなくちり紙だった。
風呂はあったが、時々祖父が近くの銭湯に連れて行ってくれた。
今までみたこともない大きな浴槽は熱かったけど20数えるまでちゃんと浸かっていた。
帰りにスーパーいなげやに寄って擦ると鳥のさえずりが聞こえるおもちゃのガチャガチャをしたりお菓子を買ってもらったりした。
夜、布団に入ると天井の木目が誰かの顔に見えて、少し怖かった。
それでも祖父母や叔父が優しかったので寂しいことは全く無かった。
当時ボクはなぜ祖父母の家に泊まっているかはわからなかった。
物心ついてから聞いた話では、その時母は胞状奇胎を患っていたようで近くの大きな病院に入院していたそうだ。
祖母に連れられて病院に見舞いに行っていたらしいのだが、なぜかその記憶だけがぽっかりと抜け落ちていた。
いつも連れて行ってもらったミスタードーナツ
こんな感じの店構えだった気がする
見舞いに行っていたことは覚えていないくせに病院のそばにあったミスタードーナツに連れて行ってもらったことはよく覚えている。
自分でトレイにトングで掴んだドーナツをのせるセルフスタイルではなく、ガラスのショーケースに並んだドーナツを店員さんに注文して取ってもらう形式の店舗だった。
どのドーナツも美味しそうで、ショーケースのガラスにへばりついて選んでいたと思う。(お店の人からしたら後の掃除が面倒だったことでしょう。ごめんなさい)
ボクのお気に入りはゴールデンチョコだった。
今でも好きなドーナツでミスタードーナツと言えばこのドーナツだと思っている。
40年近く経った今でもゴールデンチョコを食べると当時の記憶がよみがえる。
普段は記憶の湖の底に沈んでいるのに、これを食べる事により、その湖に石を投げ入れて底で土が舞い上がるようにふわっと記憶が戻ってくる。
今となっては祖父も祖母もこの世にはいないが、当時遊んでもらった楽しい時間とその時の笑顔が思い出される。
かけがえのない、大切なドーナツだ。